町家の話題

町家の話題

さて、釘が一本、柱に打ちつけられました。これは、何かを引っかけるためのものではなく、工事が始まったという印です。

10月1日の記事で書いていますが、町家の改修を行うことが決定し、いよいよ具体的な工事が始まります。と言っても、今回は道路に面している建物の表面の改修ということで、建物の内部については一部を除いてこれから徐々に進めていくという予定になっています。先は長いですが、まずは具体的な初めの一歩というところでしょうか。

近々、囲いや足場が組まれていくことになるでしょう。一般的な家ではなく、古民家、特に京町家に関する工事をリアルタイムで間近に見れるというのはなかなか珍しい機会だと思うので、可能な限り写真に残して、紹介していけたらと思っています。

そして、工事開始に伴って、もたもたと進捗していた角帯づくりにもいよいよ尻に火が付いた格好です。今現在織機は、道路から見て一番手前の部屋に置いてあって、そこで日々織っていますが、今回の表面の工事ではその影響をもろに受けるというか、部屋のものは全て一旦撤去なので、近々建物をさわる作業が始まるまでに何とかしないといけません。

まあまだ若干ですが猶予はありますし、最悪、織っている途中でも機は運べるのですが、なんとなく自分の気持ち的には工事が始まるまでにスッキリと終わらせたいので、ちょっと多少無理してでもスパートをかけたいと思います。

詳細な数字は把握していませんが、京都では毎年かなりのスピードで京町家が無くなっている、というのはもう結構知られているのでしょうか。この流れを見ると、伝統的な町家が無くなるのはいけない、保存・活用されるべき、という思いが湧き上がってくるのは当たり前かと思いますが(僕ももちろんそうですが)、今回いざ当事者になってみると、ことはそう簡単ではありませんね。

一番のネックは、当然のことなんですがやはり「費用」だと思います。京都市では町家の保全・活用のためのさまざまな補助金を用意していてそれ自体はきちんとした対策かと思いますが、補助金というのはこれも当たり前ですけど自分の出費とセットになっているわけで、補助金が全てを解決するわけではなく、逆にいろいろなジレンマに囚われるケースもあるかと思います。

なので、よほどの覚悟や志、あるいは切実な事情が無ければ、持ち主が手放してしまうのも無理はないなと思いますし、これから町家を直して維持・活用していくには相当なエネルギーが必要だということは痛感しました。元々は自分の趣味的なことや貧乏性から始まったこの話ですが、今となってはかなり重たいものを背負ったなというのが正直な感覚です。

まあ、この町家と本業である爪掻本綴と、次へと繋いでいくものが2つあるというのはやりがいがあるとは思いますし、ありきたりですが相乗効果を期待して、できるだけのことはしていきたいという思いです。