紫の引力

紫の引力

紫という色は、高貴な色とされてきた歴史があります。
身分の高い人しか紫色を身に付けることを許されなかったり、そもそも紫という色が、最も位の高い色とされていたこともあります。
現代においても、紫色というのは、特別感のある色なのかもしれません。

 

 

さて、そんな紫色に染まった糸があります。
本綴帯の横糸につかう絹糸です。
やさしい薄さに染まったものもあれば、
鮮烈に濃く染まったものもあります。
赤味がかったものから、逆に青味がかったものまで、さまざまです。
ちなみに、赤味の強い紫は「京紫」、青味の強い紫は「江戸紫」とされています。

実は、この紫色の糸は自前で染めたものなのです。
糸染めは、プロの染め屋さんにお願いすることがほとんどですが、一部、自前で染めた糸をつかって制作するものもあります。
その中でも、今回のものは「紫根(しこん)」という植物をつかって染めたもの、いわゆる草木染めの糸です。

 

 

「紫根」とは、ムラサキ(紫草)という植物の根で、その名のとおり紫色をしています。
(参考:紫根(田中直染料店サイト)https://www.tanaka-nao.co.jp/item/135-302-40
この材料としての紫根を抽出処理すると、紫色の染料が出てくるので、それをつかって糸染めするというわけです。

染めの作業工程は、また別に詳しく紹介できればと思いますが、
今年に入ってから、服部綴工房では、紫推しというか、紫根染めの糸を使った帯を多数制作していて、この紫根の染料で染まる紫色はとても品が良い、と評判です。

 

 

そして、今現在、紫の糸を用いて制作している途中です。
自前で草木染めをしていると、頭でイメージしている色にぴったり合わせるのは難しい…というか同じにはならないものです。
それは、自然の材料を相手にしているという理由もあるし、プロの染屋さんほどの技量がないという原因もあります。
なので、毎度、できあがった糸を前にして、想像を膨らませます。 

今配色しているものも、染め上がった紫を基準にしてイメージを広げていく、という流れで制作しています。
しかも今回は、これまで紫に合わせたことのない暗い色の地糸をつかうので、どう織り上がるのか、ある意味未知の世界です。
できあがりが楽しみです。

これまでの経験としては、紫というのは、配色的に何にでも合うというものではなく、難しい色だと感じます。
もしかすると、着物や帯などのコーディネート的にもそうなのかもしれません。
しかし、そこにあると目を引く、
というか、目にする人を引き込むような力のある色だなと感じます。
そして、そんな紫がちゃんと活きるように、制作をしていきたいと思っています。