遊び心があるもの

遊び心があるもの

糸というのは長くつながっているもので、
糸繰りや整経をやっていると特に、切れ目なく延々と続いている絹糸に感心します。
そしてそれは、お蚕や糸屋さんの仕事の賜物でもあります。

そんな糸でも、もちろんどこまでも続いているということはなく、必ずどこかに切れ目はありますし、織物を織るためには、それを繋いでいかなければなりません。

織り手さんは、糸と糸を繋げるとき、「機結び(はたむすび)」という結び方をします(「のの継ぎ」という言い方もあります)。
これは、結び目が大きくならず、かつ強い力で引っ張ってもほどけにくい、という結び方で、織物特有のものかもしれません。

爪掻本綴の場合、つかう糸が他の織物に比べて太いこともあって、どうしても結び目が目立ちます。なので、繋いだところは基本的に織物の表側には出しません。

ですが、その結び目をあえて隠さないものもあります。
色柄を表現する横糸の継ぎ目をそのまま織り込み、結び目をそのまま表側にも出してしまうのです。

 

 

上の写真の、表に出ている節(ふし)のようなものが、横糸の機結びの結び目です。
そして、ベージュの部分が結び目を出さない地糸の部分で、
ブルー系の部分が結び目を出す糸(「ふし糸」と言っています)の部分です。

制作の段取りとして、このふし糸は事前に準備してしまいます。
織りながら糸を繋いでいくのではなく、最初に繋いでからそれを織っていきます。
なので、地糸やふし糸にどういう色をつかって、それがどのように織り上がるのか、入念にイメージして、ふし糸づくりに臨みます。

しかしそれでも、実際にどう織り上がるかは偶然の要素が強いのです。
仕上がりの大まかなイメージは掴めますが、
結び目がどこに出てくるか、
そして、ふし糸の色の並びがどのようになるか、
これらは、出来上がってからのお楽しみ、というところがあり、それがおもしろいところです。

 

 

これはちょうど今、準備中のふし糸です。今回は、パステルカラーを中心にいくつもの色をつかっていて、それが機結びで繋げられています。
このふし糸を織り手さんは織り込んでいきます。
ふし糸それぞれの長さがまちまちで揃っていないこと、
そして、ふし糸をどういう幅、間隔で織るかは、織り手さんの裁量が大きいということ、
これらによって、偶然の要素が生まれてきます。

どこにどういう色を使って、どのように柄を形作っていくか、それはつくり手がコントロールするものですが、それをある意味で手放して、
どう出来上がるかを楽しむ。そんな遊び心が入っている帯だと思います。
毎回色々な意味で、織り上がりに期待してしまう。そんな帯はなかなか他にありません。