新作、できあがり編

新作、できあがり編

ああでもない、こうでもない、と悩んで、
いけるだろう、という期待と、大丈夫かな、という不安、
そういうものが混ざりながら、織り手さんにお願いした帯ができあがってくる時は、やはり楽しみなものです。
以前に制作の過程について書いていた帯ができあがってきたので、それを紹介していきたいと思います。

 

参考
『夏本番、爽やか制作』 http://hattori-t.com/2019/08/10/natsuhonbansawayakaseisaku/

イルカの柄の帯です。
つくってみて思うのは、柄よりも配色についてです。
全体的に、かなり爽やかな色をつかっていて、これは服部綴工房としてはあまり類を見ないタイプの配色です。
どうしても、色の好みというのは固定化してきてしまうもので、そこからの脱却を目指して、イルカというテーマとも絡めながら、配色を考えていきました。涼やかな印象で良いものになったと思っています。

柄の部分のイルカ、波を表す曲線、そして水飛沫の玉、これらは全て、「割り杢(わりもく)」といって、2色の糸を掛け合わせてつくる糸で織られています。
といっても、今回は色の近い糸同士なので、ぱっと見では分かりづらいかと思われますが、単色では平坦な印象になるところを、微妙な色の変化を出す狙いがありました。
イルカの糸にはさらに、細い銀糸が巻かれていて、角度によっては控えめな輝きが見えます。
柄部分については、なにより、可愛く織って下さった織り手さんに感謝ですね。

 

参考
『紫の引力』 http://hattori-t.com/2019/08/17/murasakinoinnryoku/

流星を表した柄です。
夜空に光る流れ星かもしれませんし、宇宙空間を流れる彗星でもいいと思います。
見る人の想像力をかきたてるような表現になればいいなと思っています。
図案は完全な新作ではないですが、この図案に今回の配色で試すのは初めてです。

さまざまな「ぼかし」の技法がつかわれています。
流星の尾の部分、その下の白色で表現される部分、そして紫色の移り変わり。
自由自在なぼかしの表現は爪掻本綴の真骨頂ともいえるところで、この帯でも上手くつかわれていると思います。
イルカの帯でもありますが、柄の背景の色をぼかしながら切り変えるのは、「段ぼかし」いう方法で、服部綴工房の帯ではよく用いられています。

そして、この紫色は全て「紫根染め」による紫色です。
染め具合によってさまざまな紫が出てきます。
良い意味で不均等に染まった糸は、織ると、独特なムラのある表情になります。
今回の地糸は黒に近いような濃い紫で、紫根の紫とは初めて合わせますが、上手くマッチしていると思います。

この帯は、できあがって早々にお嫁にいくことが決まりました。ありがたいことです。

こんな感じで、また新しいものができあがったときは、紹介していきたいと思いますので、見てもらえるとうれしいです。