色という沼

色という沼

子どもの頃、学校の授業などで絵の具を使って絵を描くことがありましたが、そのとき、絵の具の色と色が混ざりあって、違う色になるのが面白かったことを覚えています。
今となっては、絵の具を使うことはなくなりましたが、その代わりに、染料を使って同じようなことをしています。

 

 

帯を織るための糸。その糸を染めるときは、染料の入った液体に糸をそのままドボンと浸して、その色に染めます(浸染という方法です)。
染料は粉末のものを使います。それを容器に入ったお湯に入れて溶かしていきます。
染料はすぐに混ざり溶けて、染液はみるみるその色に変わっていきます。
そして、その上から違う色の染料を入れると、色は混ざり、また変化していきます。
何色もの染料を入れていくと、染液の見た目の色は、ほとんど黒に近くなります。そこへ真っ白の絹糸を入れていくときの緊張感は、何度やってもたまりません。
本当にイメージ通りの色に染まるのか?この手を下ろして糸を液に入れると、もう後戻りはできないぞ。

しかも、染料の色によって、糸に染まる速さが違ったり、その後、糸を絞って水分を落とすときに、染料が抜けていく量もそれぞれ違ったりする。
最初に青色が染まり、その後、時間差で他の色。そして最初の青が最終的に絞ると大量に抜けていく…というような。
同じ青でも、染料の種類によって特性が違ったり…
とにかく難しい。しかし、その難しさをクリアして、狙った色に染まったときのうれしさは、何度やってもたまりません。

 

 

基本的に糸染めはプロの染め屋さんにお願いしている中、一部、化学染料でも自らの手で染めているものもあります。
染めの難しさを肌身で感じているので、染め屋さんが当たり前のように毎回見本通りにきれいにムラなく染め上げてこられることの凄味というか、まるで魔法のような技に感服しています。
それゆえに、自分たちで染めるときは、少し工夫を凝らした染め方をしていて、それが織物として他とは違う魅力的な表現になります。
糸の染め方次第で、ものづくりの可能性はもっと広がるのでは、と感じているので、自身でも技術を身に付けていきたいと思っています。

普段している配色の作業は、色を「選ぶ」ことですが、染めは、色を「つくる」ことです。
もし、自分で「つくれる」ようになれれば、こんなに面白いことはないのでは、思います。
最近では、配色の糸を見ていると、「どう混ぜるとこの色ができるだろう」と考えてしまい、手が止まってしまうこともあります。
色という沼は、本当に広く、そして深いと感じます。