試作品へ愛をこめて 

試作品へ愛をこめて 

 

僕が、少しばかりですが綴を織る技術を身に付けて、実際に織れる環境を整えた上で、まず最初につくったのは、自分用のブックカバーでした。

その時点で知っていることやできることは今よりも限られていましたが、自分が好きなものや、必要だと思うものを実際に形にできるというのは、喜ばしいことでした。
そして、その後も、自分用の名刺入れや色見本、角帯をつくり、それらを仕事の中でつかいながら、今に至ります。

このように、自分でつかえるものをまずつくってみる、というのは、試作品をつくってみる、ということなのだと思います。
試作品について、ああでもないこうでもない、これはダメか、こうした方が良いか…
と、ある意味責任を負うことなく、無邪気に考え自由に手を動かしているその時が、ものづくりで一番楽しい部分かもしれない、と感じます。
なので、何かを試してみる、というのはすごく面白いですし、頭の中では、その順番待ちの列が途切れることはありません。

 

 

写真のものも試作品で、名刺入れ・カードケースです。
今年の制作では毎度おなじみになった、紫根染めの紫の糸をつかっています。
今回は、自分で織ったのではなく、いつもお願いしている織り手さんに織っていただいていますが、これまで自ら試作でやってきたことを踏まえて、3つのパターンでつくっています。
織りについては、これまでの蓄積をどう活かすかがテーマで、ほぼイメージ通りになりましたし、それに加えて、裏地や芯をつけてしっかりした手触りにするという新たなチャレンジも功を奏し、全体として良いものに仕上がったと思っています。
さらに、ものの見せ方も、いつもと同じではなく、少し凝ってみました。

これがそのまま、商品化するかどうかは、未定です。
帯ではなくいわゆる「小物」を展開すること、そしてそれを本綴の生地で行う、ということには難しい面もあると感じています。
しかし、仮にこれが全く世に出なくても、それまでのことが無駄になるということはありません。
やってみて初めて分かる、ということは多く、それらは新たなアイデアの種になったり、次の制作で応用されることでしょう。
そのために、軽はずみにいろいろ試してみる、といった遊び心のようなものは、持ち続けたいと思っています。