染め粉を入れる心境

染め粉を入れる心境

なんだか、しっかりと秋、という感じの気候になってきました。
町家工房の中も、今はとても快適で作業もしやすいです。
新設の染め場では、少し前までは草木染めが行われていましたが、ここ最近は、化学染料による糸染めが始まっています。

草木染めは、植物を煮て抽出される成分を染料として使いますが、化学染料の場合は、各色の染料となる粉末を湯に溶かして、染液とします。染料の粉は染め粉とも呼ばれていますね。

一番初めに染料を容器に入れるとき、つまり、透明な湯に入った染料の粉が瞬く間に溶け出し、煙のように対流にのって広がり、だんだんと液体に色が付いていき、やがて容器の中がその染料一色になる様子は、何度やっても見入ってしまうところです。
この一発目をじっくりと見届けてから、次の染料を入れていきます。

そして、必要なだけの染料を入れた後は、ついに糸を染液の中に浸けていきます。
ここからは一発勝負。いったん糸を浸けて色が付いてからは、後戻りはできません。
なので、糸を容器に沈めるときは、いつも息を飲むような心境、望む色に染まってくれと祈るような気持ちになります。
実際は、初めに染めた後も微調整をしますし、最悪の場合、薬品を使えば染め直しはできるものですが、そういった選択肢は基本的に考えず、常に一発勝負の緊張感を持って臨むようにしています。
染め粉を入れているときは、その準備を積み重ねているわけで、感覚は研ぎ澄まされ集中しています。

少しずつ経験を積むことで、色の配合は徐々に上達してきたのでは、と感じていますが、真に難しいのはこの先の段階だと個人的には思っていて、それは、染めムラを起こさない、ということです。
せっかく狙い通りの色に染まっても、そこにムラや汚れがあったら台無しになります(意図的なものは別ですが)。
この部分の知識や技術が僕には皆目なくて、これがプロの染屋さんとの決定的な差です。
いずれ必要になるところだろうと思っているので、早く身に付けたいと思っています。