新しい(?)実演の話

新しい(?)実演の話

 

この織機は「実演用」の綴機です。
実演というのは、販売の現場に綴機を持ち込んで、そこで職人さんに実際に織ってもらって、綴が織られる様子をお客さんに生で見てもらう、という催しです。
最近ではめっきり実演もなくなり、この機も眠っていましたが、急遽用事ができたので、組み立てて稼働してもらっています。

景気が良く物もよく売れた時代では、実演も頻繁にあったと聞きます。(僕は経験していません)
綴機は分解して持ち運びできます。もちろん結構な容量になりますが、箱に詰めて梱包して、各地の販売の会場に宅配で送る。そこに織り手さんとともに行き、織りの実演をしながら販売を行う。
現場で組み立てて、終わると分解して、次の現場へと送る。各地を機が転々としていたようです。他界した僕の祖父が現役ばりばりの頃の話です。40年ほど前でしょうか。
その後も実演販売は続きますが、業界の下降とともに下火になっていき、今では年に一度あるかないかという具合です。

 

 

実演用の機なので、基本的には組み立ててすぐに柄部分が織れるようになっています。今回はその条件が必要でした。
今回これを組み立てたのは京都にある町家の工房の中。そして、ネットを通じてリモートで遠く離れた催事の現場にいる方々に、爪掻本綴を織っている様子を見てもらう、ということです。
何しろかなり急ぎで決まった話だったので、日程や織るペースを調整する余裕も無く、そこで、すぐに柄部分が織れるこの機に白羽の矢が立ったのでした。

このリモートの催しは、今回で2回目になります。(もちろんそれぞれ別の場所です)
コロナ禍によって、リモートでいろいろなことする、ということがかなり一般化されました。
なので、需要もあって、今後も増えていくのでは、と感じています。
実物を間近で見るという体験とは違いますが、遠く離れたところから職人の作業風景を覗けて、コミュニケーションもできるというのはこれはこれで面白い体験だろうと思います。
この先、通信環境が今より良くなると、もっと伝わりやすくなるし、爪掻本綴を織る光景は画面映えもするし、この手法に向いているのでは、と期待しています。
これからの時代の変化に備えて、頭を柔らかくしていろいろと考えていきたいものです。