歯がゆい七宝

歯がゆい七宝

丸(円)を組み合わせた「七宝(しっぽう)」という文様があります。
いわゆる吉祥文様の1つで、円形が連鎖して広がっていく様子に円満や調和、ご縁などの意味が込められた、縁起の良い柄だとされています。

僕もこの七宝柄が好きで、これを用いていろいろな図案をつくりたいといつも考えていますが、なかなか難しさも感じています。

その大きな理由としては、爪掻本綴で円を表現するのは簡単ではないからです。
特に真円を狂いなく織り出すには高い技術を必要とします。
揺らぎのある曲線だと、多少ズレがあってもあまり目立ちませんが、滑らかな曲線の中にある少しのズレは違和感となってすぐに分かってしまいます。

1つの円を織るのにも繊細な作業が必要ですが、これが空間を埋めるような割付の七宝柄の場合だと、相当な難易度となりその分手間もかかってしまいます。
なので、僕にとっては、七宝は好きだけども自由に制作できない歯がゆさを感じる柄でもあるのです。

上の写真は、現在制作に取り掛かろうとしている七宝の図案です。
小ぶりな七宝が散らされている、シンプルであっさりとした印象の柄だと言えます。
これをこのまま素直に織るのも良いですが、この柄は七宝部分の組織を変えて、シンプルな中にも少し変化を取り入れています。それが下の写真です。

このように、うちの中での七宝の柄づくりというのは、単純に細かくしたり凝ったことを盛り込むのではなく、爪掻本綴に適した工夫を取り入れるというものが多く、そこが難しく、また面白いと思います。