「さわれる場所」をつくる

「さわれる場所」をつくる

コロナ禍の中、さまざまなものが制限されましたが、とりわけ最も影響が大きかったのが、外出・移動の制限だろうと思います。

それによって、Zoomなどのリモートでやり取りする仕組みが世の中に速く普及し、画面越しでもコミュニケーションをとる術が発達したとも言えますが、やはり直接会う、話す、やり取りをする方が良いと感じている人も多いのではないでしょうか。
そしてそれは人だけではなく物についても同じで、直接見る・触れる機会が減った現在、画面越しのやり取りで完結することも増えましたが、一方で、実物を見たり触れたりしたい、という熱が高まってきているのではないか、と想像します。

ところで爪掻本綴(の帯)というのは、なんとも分かりづらい代物だと、自虐的に思います。

組織が平織りで平坦なので、例えば唐織などと比べると立体感に欠けますし、様々な織り方を駆使する織物と比べると、やはり華やかさやインパクトでは劣ることが多いと感じます。
技術的に高度な部分も、実物とセットで詳しく説明してやっと理解していただけるものです。
生地は、硬すぎず柔らかすぎず、しなやかで、さわると驚かれる方が多いのですが、これはさわってみなければ分かってもらえません。
そして最大の魅力が、一度締めると緩んでこない締め心地なのですが、これはもはや、身に付けてもらって初めて体感してもらえることです。
このように、実際に見る・触れることができない環境では、爪掻本綴の良さはなかなか分かってもらいづらいのです。

さて来週から、仕事場の改修がスタートします。
うちには工房もありますが、
工房…織機がある、織り手さんがいる。織り・染めをする場所
仕事場…図案、糸、商品がある。企画・制作・準備をする場所
といった位置づけです。
仕事場は住居も兼ねているのですが、昨今では来客が減ったこともあって住居の割合が大きくなり、閉じた環境となってしまっていました。爪掻本綴を知ってもらうのに適した舞台とは言えません。
それを徐々に変えていこう、というわけです。

いつでも開放されている空間、とまではいきませんが、来てくださった方に商品だけではなく爪掻本綴のさまざまなものを実際に見て触れてもらう。
工房とも併せて、さまざまなことを体感してもらえる。
そういう「さわれる場所」が必要だな、と考えています。
どう転がってゆくかまだ分かりませんし、全てはコロナ禍が収束してからの話になるとは思いますが、今から準備を進めていきたいです。