最初の1本から1年が経って

青で統一されたグラデーションの柄の綴帯。
長野県の岡谷市にある「岡谷絹工房」で織られたものです。
この柄は私たちの定番シリーズである「あさぼらけ」の中の1つ。
地のグラデーションにはさまざまな色を用いることが多いですが、今回は青で統一しました。
かなり思い切った制作になったな、と思いますが…
岡谷は諏訪湖のほとりにある町。
ここで今回の定番柄をつくることを考えたとき、湖と空のイメージが思い浮かびました。
それが青だけの配色になった理由です。
信州の爽やかな空気感や豊かな自然を感じられるものであればいいな、と思っています。
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岡谷絹工房は、織りを学ぶ、生業とする人々が集う織物工房です。
一昨年より私たちの綴帯の制作がこの地でも始まっていて、そこから順調に、堅実に綴のものづくりは進んでいます。
岡谷での最初の綴帯が織り上がったのは、昨年の冬。もう1年が経ちました。
昔、綴織の仕事をしていた織り手さんがたまたまその場所にいた…という偶然のご縁から始まりましたが、まずは無事に続いていることに感謝です。
京都でずっと仕事をお願いしているベテランの織り手さんはもう全員がかなりのご高齢。
それより少し下の世代の岡谷の織り手さんに出会えたことは、職人の世代交代に悩む私たちにとっては計り知れない幸運でした。
工房へ綴機や機道具を運ばせてもらい、少しずつこの地での綴織を始めていきました。
織り手さんは最初はブランクがあるから…と謙遜されておられましたが、なんのその。
シンプルなものからスタートされ着実に制作を重ねられ、今回の定番ものも美しく織り上げてくださいました。
特に柄の中の白で表現されているところ…細くすっと入る雲やぼんやりした光に織る人の個性が出るものですが、この方は繊細にそして丁寧に仕上げてくださっています。
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最初の1本から1年が経って。
今年も、そしてこの先も、工房のゆっくりした時の流れとともに綴のものづくりが進んでいってほしい。
その環境を守るとともに、さらに少しずつでも広がってほしいという思いもあります。
岡谷絹工房は、今も毎年織物を学びたいという人々が集まってくるとても魅力的な場所です。
願わくば、この場所で綴に触れ、綴織を始めたいという人が生まれてほしいと思います。
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