雑記帳

 
サラリーマンから綴織の家業に入った3代目です。
日々の制作のことや思うことを綴っています。

「きものSalon 2025春夏号」に私たちの帯を掲載していただきました。

しかし、なんとなんと。
表裏が逆で、帯の裏面が掲載されています。

糸の始末が丸見えになっているので、もしかするとご覧になった中で疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれないので明らかにしておきますが、
掲載されているのは「裏面」です。
(当該の写真は載せませんが)

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しかしよく考えてみると、帯の裏面がこんなに堂々と載るということも滅多にないことだろうし、爪掻本綴の裏がどうなっているかを見れるのも珍しいことかもしれないので、爪掻本綴の表裏について改めて少し紹介したいと思います。

こちらが表面
こちらは裏面

上の写真のように、爪掻本綴の表面と裏面は綺麗に左右反転となっています。
裏で糸が大量に渡っている、ということもありません。
例えば力織機で複雑な多色の文様などを織るとき、生地の表面に出ない色糸は裏で渡って(隠れて)いることが多いのですが、爪掻本綴の場合は、どんなに多色づかいでも裏面に糸が渡ることはなく、表の柄が左右反転した姿になっています。

これは手織りならではの特徴で、赤なら赤、青なら青、と配色の中のそれぞれの部分だけを織り進めていくからです。
この帯の場合、柄の紫色それぞれの部分だけを形作っていきます。
一般的な織物のように杼が毎回端から端まで通る、というわけではなく、杼で縦糸をすくって必要なところだけに横糸を通して、それを往復することの繰り返しで進みます。

このような織り方であるがゆえに、従来の裏面を表面にして使う…ということが可能になります(「裏返し」と呼ばれる)。
その際、裏に出ている糸は全て手作業で反対側に押し込むように処理して、見えないようにします。
「汚れてしまったので裏返しお願いします」というご依頼が年に何回かは舞い込んできます。
柄のところは左右反転してしまいますが、単純に長持ちさせることができるし、世代を超えて渡すこともできるでしょう。

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何はともあれ、裏面が掲載されるというこんな機会もなかなかないと思うので、いっそ是非誌面を一目ご笑覧くださいませ。
(掲載されているのは40ページです)
そして同時に、その他の美しい着物や帯のお品の数々をご覧いただければと思います。

 

 

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