爪掻本綴について

 

爪掻本綴(つめかきほんつづれ)、と読みます。

西陣織の12の品種の中の「綴(つづれ)」。そのうちのひとつであり、
その起源は古く、紀元前15世紀頃の古代エジプトの王墓から出土した綴織技法の麻織物が最古とされています。
(参考:西陣織の品種 https://nishijin.or.jp/whats-nishijin/kind

 

 

最も特徴的なのは、人の爪を道具にして糸を織り込んでいくことです。

職人さんが自らの爪をノコギリのようにギザギザに整え、
「爪」で「掻」くの言葉のとおり、爪で横糸を掻き寄せて絵柄を形作っていきます。

 

 

縦糸の下にある図案を見ながら、職人さんは横糸を織り込んでいきます。
その際、全ての部分を爪で織るというわけではありません。
他の道具では織れないくらいに細かいところを織るために、爪が必要なのです。

 

 

爪掻本綴では、いわゆるジャカードの装置はつかわず、
始めから終わりまで全て、人の手足、身体を駆使して織り進めていきます。
足で踏木(ふみき)を踏み縦糸を上げ下げし、
その隙間に手で持った杼(ひ)をくぐらせる。
どこに、どうやって、どれぐらい、糸を通せば良いか、全て自分で考えて判断する。
目で視る色、形、長さや太さ、そして数。
そして、手足から伝わる糸や機の感触。
職人さんは、自分の感覚や思いを総動員して織り進めます。
そして、できあがる織物には、それらの感じたことや思ったことが直接表れていると言えます。

 

 

もちろん、この織物はつくり手だけのものではありません。
爪掻本綴をつかう人。その好きな色、望む形、
その人ならではのものを、織物として生み出すことができます。
繊細な色の移り変わりから、大胆な色の切り返し、
既存の絵柄の改変から、独自の図案の創作まで。
あらかじめ設計されたものではない、表現するための制約が少ない、
自由自在なものづくりが魅力であり、また楽しみでもあります。

そんな爪掻本綴を、服部綴工房はつくり続けています。