現在、服部綴工房のつくる織物は、そのほとんどが帯です。
爪搔本綴の帯。その生地は独特です。特別と言っていいかもしれません。
綴織は「縦糸の見えない平織」と定義されます。
縦糸が見えないということは、表に出ているのは全て横糸で、どんなに細かい柄でも、それは横糸だけで表現されています。
そのためには、縦糸は強く張り、横糸は縦糸をくるみ込むように余裕を持たせて、人の手で力加減を調節しながら織り込みます。
そうすることによって、触るとやわらかいが、しっかりと芯の通った強さがある、
つまり、しなやかな風合いに仕上がります。
不思議なことに、この独特な本綴の帯は、身に付けるとゆるまないようにできています。
しまり過ぎるということはなく、かといって、ゆるんでくることもない。
つかう人の身体に合った、快適なしめ心地が感じられることと思います。
綴の帯は格式が高く、「名古屋帯(一重太鼓)で第一礼装まで使える唯一の帯」とされています。
豪華絢爛に輝く爪掻本綴の帯は、いわゆる「お道具」として重宝され、また憧れられてきました。
しかし、時代は変わりました。
今は、楽しみのために着物を着て、帯をしめる人が増えてきています。
そのような中でも爪掻本綴は活躍できます。
本綴の帯は、ゆるみにくく、しめ心地が良いので、普段の暮らしの中でもつかいやすいものです。
一方で、格式の高さは変わらないので、その人の「とっておき」の場面でもつかっていただけます。
つまり、つかう人それぞれの着物生活に寄り添えるのが、爪掻本綴の帯なのです。
服部綴工房では、帯1本からの制作をしていて、色、柄、長さなど、完全なお誂え(オーダーメイド)ができます。
爪掻本綴の帯が、素敵な着物生活の中にさらに楽しみを加える「お気に入り」になれるように。
日々、ものづくりに励んでいます。