日々の制作

ものづくりの日々を切り取ってみました。

茜と紫根の〇

丸。

シンプルな丸の柄です。
配色は草木染めの紫根と茜です。

紫根と茜を同じ配色の中で使う、というのはこれまでの制作では意外と無かったように思います。
なぜかと考えてみると、紫のときは紫の、茜のときは茜の色の、それぞれの世界観を表さなければ…という考えになっていたのではないかと。。

でもやってみると、案外しっくりくるなあと感じます。

今回、2つを一緒に使おうという気になったのは、丸の柄だったからではないかと思います。
小ぶりな丸が並ぶ柄ということで、単に色を並べる、色で遊んでみるという風に考えることができたのかもれません。
新しい試みになったな、と思います。

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ところで、この丸という形。特に真円は爪掻本綴では綺麗に織るのは難しく、少しでも形が崩れるとたちまち粗が目立ちます。
図形の中でもトップクラスに難しいこの真円。それを織るのが面白い、楽しいとおっしゃるのが、今回お願いした織り手さんです。
最若手の方ですが、頼もしい限りです。

その織り手さんが製作途中を撮影したのが写真もあります。
織機の下から撮影したもの。丸の形ができる過程です。
そして各色の糸が巻かれた管の写真。
爪掻本綴特有の「割杢(わりもく)」という技法で用意された色もあります。

今回の配色では、ランダムに色を置くのではなく、茜の赤から紫へとだんだん色が移っていくような配置にしています。
この間の部分に使われているのが、割杢の糸。
これは中間色をつくるための方法で、2本撚りの糸を1本ずつに分けて、同様の他の色と再び撚り合わせます。
濃淡が混じり合っているように見える糸がお分かりになるでしょうか。

それに加えて、柄の中間の丸の部分には、糸染めの際に紫根の色と茜の色とをミックスした特製の色糸も使っています。
これは紫根染めの後にその上から茜染めを施すもので、両方の色が混ざり綺麗な良い色になります。

このようなさまざまな技術や工夫があって、結果的にシンプルな帯に仕上がりました。
紫根と茜、両方の色を同時に味わえる良いものになったのではないかと思います。

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