同じ糸で制作する
「彩錦(いろにしき)」という綴帯。
私たちの定番のシリーズです。
斜め方向の色のぼかしが不規則に連続するこの柄。
1箇所とて同じ繰り返しはありません。
複雑な色彩が魅力のこのシリーズですが、今回は黄色味を主とした色合いに仕上がりました。
ぼかしの柄の動きの中で、さまざまに色が移り変わりを見せます。
このようになるのは、糸染めの際に、色がグラデーションみたくなるように特殊な染めをしているからです。
使っている色数は見た目ほど多くはありません。
しかし織るときの細やかな調整で、糸の濃淡のグラデーションが隣り合ったり遠ざかったりすることで、色が揺らぎ流れるような複雑な色彩が生まれます。
この柄の制作においては、まずは染めた糸が特別なモノだと言えます。
そんな特別な糸ですが、これを帯にしか使わないのはもったいないな、と思っていました。
そこで、今回の帯に使ったのと同じ糸でカードケースを作ってみました。
写真の帯の上にあるのがそうです。
この柄の色の流れを存分に活かすために、表裏ともに「彩錦」の綴地で仕立てています。
元々、綴の生地はしなやかな風合いですが、それが2重になっているので、とてもしっかりした手触りとなっています。
柄が出る面積は小さいですが、逆に見る面によって帯よりもさまざまに色の調子が変わるのが良いなと感じます。
帯と揃いの小物がある…というところに面白さと感じていただけたり、あるいは、この柄の色の移り変わりの妙に単純に魅力を感じていただけたら有難いなと思います。
せっかく色を染めて糸づくりからやっているのだから、帯の制作だけではなく色々なものづくりの可能性を考えていきたいですね。
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