橘(そして檸檬)
橘。
橘(たちばな)は日本に古くから野生していた日本固有の柑橘類で、古事記や日本書紀にも登場するとても歴史のある植物です。
常緑の葉で果実がなることから、長寿や子孫繁栄の縁起があるものとされてきました。
古事記、日本書紀では「不老不死をもたらすもの」として記され、京都御所には「右近橘」として代々植えられ、文化勲章の意匠には橘の花が用いられるなど、歴史・文化的に尊重されてきた植物だといえます。
(これらは制作した後に知りましたが、橘、スゴいですよね。)
橘は、その文様の方が広く知られているかもしれません。
葉や果実を組み合わせたさまざま形があり、吉祥文様としても古くから現在に至るまで幅広く用いられています。
ただ、今回の制作では文様ではなく実際の姿を表現しました。
制作にあたっては、その配色、特に常緑の葉の緑と果実のオレンジをどのように綺麗に鮮やかに表すことを考えました。
爪掻本綴お得意の色のぼかしを使って、美しく織り上がったと思います。
そしてこの2色に合わせて地色をどうするか悩みましたが、うすい水色となりました。
橘の実の旬はちょうど今の時期。秋から冬にかけての冷たくも澄んだ空気の感じを表現できればと思い、この地色となっています。
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橘という題材において、なぜ文様ではなく実際の姿を柄にしたのか。
それは以前に制作した檸檬(れもん)の柄の帯が影響を与えています(写真4枚目)。
この檸檬の帯は個人的にとても気に入っていて、有難いことに何本も作る機会がありました。
そういった良い柄は配色や柄の一部に変化を加えて制作を続ける…ということになるのですが、檸檬の帯は全体として良く出来上がっていると感じていて、部分的に手を加えて変えることにあまり気乗りがしませんでした。
そこで、図案は変えずに配色をがらっと変えて、全く別のものを作ることに挑戦してみました。
結果、出来上がったのがこの橘の帯で、柑橘類という繋がりはあれど、檸檬とは違うまた新しいものが出来たと思います。
こちらの方ももちろん気に入っています。
そして次にまた同様の制作ができるのか…と早速考えております。
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