京都のいわゆる「西陣」、その西のはずれ。
金閣寺や北野天満宮にほど近いところで。
1962年(昭和37年)の創業以来、服部綴工房は爪掻本綴の織物をずっと作り続けています。

爪掻本綴(つめかきほんつづれ)、と読みます。
西陣織の12の品種の中の「綴(つづれ)」。そのうちの1つであり、
その起源は古く、紀元前15世紀頃の古代エジプトの王墓から出土した綴織技法の麻織物が最古とされています。
(参考:西陣織の品種 https://nishijin.or.jp/whats-nishijin/kind/)
「爪」で「掻く」の文字通り、職人が自らの爪を使って糸を掻き寄せて、織っていきます。
爪先をギザギザにして櫛のようにして、絵柄を形作っていくのです。
まだ機械が無かった時代、職人は小さく細かい絵柄を美しく織るために、爪を道具としたということ。
裏を返せば、全てを爪で織っているわけではなく、様々な道具の及ばないところを手で織るために、爪が必要なのです。
機械が登場した後も、この精緻な手仕事は脈々と受け継がれてきました。
そして現在でも、私たちはこの地道なものづくりを続けています。

決して大量生産はしない…というかできません。
1つ1つ、丁寧に作らなければならないから。
作り手にはそれぞれ個性があって、同じものを作ったとしても、どこか少し違う。
手仕事ならではの醍醐味とも言えます。
そして、手仕事ならではの自由さ。
1つずつのものづくりは、それを受け取る人の想いや希望を受け入れることができます。
つまりはオーダーメイド。
全てが手仕事、というのは、実に手間暇のかかるものです。
しかしそれ以上のおもしろさがあります。
1つ1つが唯一のものになる、そう思いながら私たちは日々制作を続けています。

昭和の中頃に生まれた服部綴工房は、以来様々な時代の変遷や浮き沈みを経験して、令和の現在まで至ります。
今、伝統工芸を取り巻く環境は厳しく、向かい風は年々強さを増しています。
油断すると倒れそうになるほどに。
需要の減少…担い手の不足…そういった大きな課題。
しかし、爪掻本綴というものには、これを乗り越えるだけの有り余る魅力がある、と信じています。
古来から受け継がれてきた魅力と、時代に即した新しい魅力。
これらをものづくりを通して伝えていきたい。
そして。
これまで営んできた生業を、
爪掻本綴の伝統や文化、技術を、
これから先も続けていき、次の世代へ繋いでいきたいと考えています。
〇社名〇
服部綴工房
〇所在地〇
〒603-8364
京都府京都市北区平野桜木町36-2
〇電話〇
075-463-0729
〇代表者〇
服部 秀司
〇事業内容〇
織物製造・販売