日々の制作

ものづくりの日々を切り取ってみました。

ちょっと昔の「しだ」

ちょっと昔の帯。

作風というのはだんだんと変化するもので、少し前のものであっても、今現在ではあまりない色合いや柄行きだったりします。

植物の「しだ」を表した柄。

これを見る度に、細かく、手間ひまをかけた仕事だな、と感じます。
伸びやかな茎と、繊細で丁寧な葉の表現。

特に葉の部分は、しだの葉の細やかさを表しながらも、リアルにし過ぎずに少し丸みを帯びさせているのが良いな、と思います。
そして、ところどころに入る割杢を使った色のぼかしが、柄を立体的に見せています。

何より、ここで表現されているしだは、すごく自然に感じます。
植物が自然とは…?かもしれませんが、ここでは「自然な雰囲気に見える」といった意味です。
これは、織りの丁寧さ、レベルの高さに起因していると思います。

爪掻本綴では、柄と柄の境目に把釣孔(はつりこう)という隙間ができるものですが、それがほぼ見えない。
特に茎のところは、把釣孔が見えて然るべし…な部分なのですが、見せていない。
これによって、織物でありながら、それを感じさせないような自然さと存在感を醸し出せている、と思います。

あとは、あまり目立たないかもしれませんが、この柄、上にいくほど徐々に色が薄くなっている配色ですが、それに合わせて地の部分も途中からグラデーションで少し色が変わっているのです。
柄を織りながら地にグラデーションを入れるのは割とめんどくさいもので…笑
手間かけてるなあ~~、と思うところです。

しだという柄も、茶色を中心とした配色も、今現在はほとんど用いられていません。
それはやはり、今には合わない…とされていったからでしょう。
残念ながら、手間のかけ具合についても、同じことが言えてしまいます。
しかし、今風のものが溢れている中で「今ないもの」を見るとハッとするのも事実。
昔のものほど新鮮に感じる…というのはこういうことなのだな、と思う次第です。

CATEGORIES