金糸のグラデーション
薄暗い空間で、うすぼんやりと浮かび上がる模様。
これは「倖線」という柄。
定番ものですが、新しい配色です。
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「倖線」は金銀糸のみで構成されることがほとんどです。
華やかに光り輝く金銀糸。
現在の制作ではほとんど出番がなくなっていますが、この柄では今も続けて使っています。
金銀糸は文字通り金と銀なので、色のバリエーションがあまり多くはありません。
なので、それ主体で構成しようと思うと、単調や大味な感じになりがちだと感じています。
繊細な色の表現が持ち味の爪掻本綴なので、この倖線という柄、そして金銀糸の使い方について何か良いやり方はないかと考えていました。
そこで今回用いたのが、中間色を作る「割杢」という技法。
バリエーションが少ないなら、新たにつくればいい…
ということで、金の中間色を作って織ってもらいました。
金糸の割杢というのは、あまりやらないことだと思います。
今回の柄は、弧を描くような形で、外側に向かってだんだんと色が濃くなる配色です。
全て金糸ですが、割杢で間の色を作ったおかげで、自然でなめらかなグラデーションになりました。
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明るく煌びやかな空間でこそ映えるのが金や銀ではありますが、仄かで控えめな光であっても、それを受けて輝くのが金銀糸だということに、この帯を制作して気付きました。
そしてやはり、繊細な色表現があってこそ、その魅力は増すだろう、と思っています。
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