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サラリーマンから綴織の家業に入った3代目です。
日々の制作のことや思うことを綴っています。

2023年になって、あっという間に1月が終わり、もう2月。
時が過ぎるのは早いものです。
我々のものづくりをとりまく環境も、これまではゆるやかな過渡期といった感じでしたが、ここ1年で激変。
あっという間の変化でした。

1番の課題はやはり「人がいなくなること」。
もっともこれは伝統工芸の業界では永らく共通の問題だと思いますが…
我々が日々仕事をお願いしている職人さんも例にもれずほとんどがご高齢。
過渡期の中にあって、準備は進めていたつもりでしたが、今から考えるとそのペースは遅かったなと感じます。
職人さんは皆、年齢を感じさせないほどお元気ですが、その元気さに甘えていた、とも言えます。

現在も変わらず精力的にお仕事をされていますが、いろいろなことが変わったのも事実。
気を引き締め直して、一度に何段階もギアを上げていかないと、と肝に銘じて進む1年になるでしょう。

 

このような「人がいない」といった事態になると、普通は人を探そうとします。
不足しているところを埋めようとします。
西陣のような分業であれば、なおさら当然といったことでしょう。
もちろんそれは絶対に必要なのですが、個人的にそれより優先すべきことは「自分が(自分で)できるようになること」です。

西陣は分業によって発展してきた産地です。そして我々のような織屋(織物メーカー)は、その分業を統括する立場。
仕事は人に任せるのが当然、というのが昔からの考え方だったと思います。
しかし僕は(現在の時点で)たかだか7年前にこの業界に入ってきた人間。分業中心の時代にどっぷり浸かっていないので、誰かにやってもらうのが当たり前、という感覚が小さいのかもしれません。
性格的にも、あまり人任せにせず自分でやりたがる、という傾向があります。

そんなこともあってか「自分が(自分で)やる」という意識を強く持っています。

 

我々が日々作っている爪掻本綴というのは、手機、つまり機械を用いない手仕事です。
これは、ジャカードを使う力織機の織物や、あるいは友禅などの染めの仕事と比較すると、分業の数としては多くはないと言えます。

とはいえ、各セクションのどこも安泰とは言えず、織りの仕事はもちろん、糸染めや、綜絖などの織機の部品や道具など、あらゆるところで次の世代を担う人材が不足しています。
むしろ織りの仕事は花形ポジションで、それ以外のほとんどスポットライトが当たることのない仕事こそ事態は深刻です。
おそらく後継者が現れないそういった仕事こそ、今後のことを真剣に考えて取り組まないといけません。

そして、分業の数が多くはない…ということは、自前でカバーできる可能性が高まる…ということでもありますが…
今までその道のプロが担ってきたことを今度は自分でやらなければならない、というハードルは、想像よりもずっと高いものだろうと思います。
しかし、現実的に人がいない以上、誰かがやらなければ続いていかない…ということです。

 

できる・できないの問題ではなく、できるようにならなければならない…
そういった差し迫った危機感だけでは、続けていくのは難しいかもしれません。

しかし僕は、織物に限らず「制作する」という行為が好きです。
今の綴帯を作る仕事も、やればやるほど新たな面白さが見つかります。もちろん難しさもありますが、芯から苦痛に感じることはありません。
そして好きだからこそ、それを続けるために必要なことは取り入れよう、吸収しようという気になるのです。
それで全てが解決できるわけではないですが、原動力としては充分だろうと思うのです。

 

「興じる」
という言葉には、どこかお気楽な響きがあるように感じます。意味は「面白がって熱中する」といったもの。
でも、自分の姿勢としては、これが近いのでは、と思います。

こと伝統工芸は、残していくべきもの…途絶えさせてはいけない…などと言われます。
その通りではありますが、自分としては正直なところ、そういった義務感や使命感ではなく、好きだからやっているのだ、と言えます。
「好き」は強いぞ…ということを心に秘めているのです。

ついでに、伝統工芸は「残す」のではなく「続ける」ものだと思っています。
結局は表現と解釈の違いに過ぎないのですが、自分の中では「残す」と「続ける」は明確に違うものであり、僕は「続ける」ために行動していこうと思います。

 

もちろん、1人で全部できるわけはないですし、自分ではどうにもならないこともあります。

常に人は探しています。
仕事を頼める人。一緒に協力して何かできる人。

そのためには、自分も実力をつけることが必要。
物事を楽しむためには、それに見合う力が要る…と感じています。

全ては、ものづくりに興じるために。
そう決めた自分の道を一歩一歩進んでいきたいと思います。

 

 

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